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祁答院町黒木817-4で整体してます。

【ガリ版文字】

略字について調べていました。略字の由来について複数の意見があります。もともと略字というのは、ささっと書くために面倒な部分、画数の多い部分や運筆の複雑な部分を除いて作られたものでしょう。ですが急いで書きたいためだけに作られた訳ではないかも知れないと、想い出したのが昔の印刷物です。今はコピー機やプリンタが身近にある為にすっかり消えてしまいましたが、ガリ版と呼ばれた印刷機をおぼえておいででしょうか。謄写版というのが本来の名称ですが、ヤスリ板の上にロウ紙を置き、鉄筆で書く音はまさに「ガリガリ」です。こどもの頃の学校からの印刷物と言えば、わら半紙にガリ版刷りでした。この版になるロウ紙というのが破れやすく、文字や数字の書き方に様々な工夫がみられます。例えば数字の「8」をロウ紙の上に描こうとすれば、真ん中で運筆が交わってしまいます。交わると破れることが多いガリ版文字の「8」は「○」を上下に重ねて形を再現します。ボクのいた小学校では、学校住み込みの用務員さんがこの文字のエキスパートで「ガリ版文字講座」なるものが開かれ、母がその講座に参加した記憶があります。その講座資料には様々なガリ版専用の略字も載っていました。今風に言えばガリ版フォントでしょうか。味のある優しい文字で、インクのにおいとともに頭に浮かんできます。考えてみればそれ以外にも、その昔は筆で墨を使い和紙に書いていました。水性の墨で水で破れ易くなる紙に書く訳です。狭い部分に繰り返し線を書いていれば破れやすいしにじみやすい。略字が出来る過程にはそんな材料が要求する事情もあったのかもしれません。人はヒトの特性だけで行きている訳ではなく、ヒトの作り出したものや環境に要求されたことに適応しながら生きています。急いで書くために略された文字や技術的要求から略された文字が今便利に使われているのです。現在はと言えばパソコンを使ってどんな難しい文字でも書けますし(書いたとは言わないかもしれないけど)印刷だってすぐに出来ます。逆に略字で書きたいと思うと困るくらいです。視点を少し変えると人が便利に使っているものが、表に現れにくいヒトの工夫の賜物だと気付きます。