どんな手技や技法も「道具」に過ぎません。手技は無限に考えられていくでしょう。ですがその対象は一つ、ヒトです。そしてどんな「道具」もヒトが独りでに治る機能を生かすことに使われます。ですが、道具があるから治せる訳ではありません。それは、たくさんの道具を集めても、ちっとも治せない人がいることや、反対に一つっきりの道具で治し続ける人がいることでもわかります。技法の違いとは、一つには視点の違いです。この視点は、治ることを理解するための道筋ともいえます。ヒトは具体的にそこにいるのですが、その実、漠然としています。ひとつの技法を学ぶことは、一つの視点、道筋を通して全体像を捉えていくことです。「道具」は治すための道具と捉えられがちですが、ヒトの治癒力を理解する「道具」です。視点を持つことでヒトの像がより明瞭になります。そして初めて道具としての力を発揮し、ヒトの治る力を発揮させるものになるのです。
