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祁答院町黒木817-4で整体してます。

【安心な不安】

本を読みました。

現在も、収束どころか何が起きているかすらもわからないフクシマ原発事故に関連したものです。スリーマイル島で35年前(2015年時点で)に起きたメルトダウン事故を覚えておられるでしょうか。著者が現地に赴き取材を繰り返し、35年後2046年のフクシマの姿を見通すという内容です。はっきり言って、明るい未来は見えてきません。ですが心は落ち着きました。35年も経てば良い未来が開けているのではないかと期待していましたが、そんなことは全くありません。米国での新規原発の話こそありませんが、今なお原発は稼働しています。数多の訴訟は費用がかさみ、訴えた側は疲弊し和解してしまうケースが大半でしたし、疫学的な因果関係も証明されませんでした。明るい未来ではないにも関わらず、心はものすごく落ち着きました。それは、すべての問題は「経済」と「人」という要素しか持たないと理解できたからです。経済も「人」の一部だとすれば、原発事故の発生もその後の対応も客観性を持つはずの科学ですら、「人」というものに左右されるだけのものなのだとわかったからです。フクシマでの政府の対応の遅れもアホやなぁと思うほど人間的な問題が大きかったのです。複雑な問題が絡み合って何処にその原因があるのかわからなくなっていましたが、「人」だけだと改めて腑に落ちたからです。僕も全くのアホでした。人だとわかれば簡単です。ある意味解決しようがありません。改めて「自分でなんとかしなければ」というところに落ち着きました。

疫学的に証明されなくても、野口晴哉は20世紀半ばに行われた数々の核実験のフォールアウトのことも理解した上で、体を整えることを唱えていました。「人」の判断で左右される科学で証明されなくとも掌でわかる異常があります。僕自身、フクシマの事故後に東京に数日滞在した小学生の不調の原因が「放射性降下物」によるものではないかという症例に出会ったことがあります。もちろん全てが判るわけではありません。判断基準を外のわけのわからないものではなく、自分の手元に持つ以外にないと思えたことが、わけのわからない不安という状況から抜け出させてくれました。

著者の語り口は優しく冷静です。原発に興味のない方にもオススメします。